75.海外でリーダーシップを発揮して働くために
普通は、こういう販売プロモーションは出荷数上限を決めて行う。
だが好調だったため、上限数を上回る出荷要請が、各代理店から飛んでくる。
これをどんどん受けていると、工場は生産能力オーバーになる可能性もあり、
またいつまでも値引き価格で販売することも得策ではない。
前述したように今まで毎年この手のプロモーションで終了時にもめていたので、
終了の1週間前通達を代理店へ徹底。最終発注受付日、供給数に限りがあることも徹底した。
それでもそれを上回る供給希望が来たのである。
最初は、この出荷増加要請を断った。とたんに各代理店からは激しいクレームの電話が
鳴り響く。代理店の各代表が揃ってこのホーチミン事務所に来るらしい。
私は、ハノイ工場と社長に電話を入れ、どこまでなら無理なく生産対応できるか?を確認した。
無理な生産対応をすると、土日対応や、人件費や光熱費、燃料費、配送費などが増えるため、
逆にコスト高になる可能性もあるからだ。
ハノイ工場の数量回答を元に、社長と話をして、増量限度数を認めてもらった。
代理店が揃ってくる前に、こちらの条件案を固めておかなくてはならない。
おそらく代理店は、必要以上の増減数を要求するだろう。
どれが市場(顧客)、代理店、当社にとって最もいいのか?ということを考えないといけない。
おそらく通期で売上は達成できる見通しだ。無理に受けることもないが、利益を犠牲にしない
範囲で、さらに売上拡大、シェア拡大も目指せる。そうすると、
大体下記のパターンぐらいが考えられる。
①当社が増量対応を断る。→代理店と市場(顧客)はうれしくない。
②代理店の要望どおり受ける。→当社はあまりうれしくない。
③条件付で受ける→3者ともまあそれなりに満足。
私は、③のようなイメージを持っていた。当社としては、代理店からの今回の
増量要望に対しては、条件付で受けるということである。
もう少し③案選択の理由付けをすると、
・市場(顧客)の観点では、大体競合も当社と同時期にプロモーションを行うので、
当社がプロモーション供給を止めれば、競合にその分取られる可能性がある。
かといって、量をやたらと稼ぐために、プロモーションでの値引き対応分が
必要以上に長引くのも得策ではない。
売上、利益と台数シェアの観点からバランス良く見ていく必要がある。
・代理店の観点はどうか?代理店はおそらく要望分ほしいということになる。
前述したようにあずけ在庫システムなので、売れたときに請求がスタートする。
つまり彼らはいくら在庫しても問題は全くなく、逆にプロモーション値引き分の
在庫をできるだけためておいて、プロモーション終了時に販売店に売ると、
通常より安く買っておいて、販売店には通常に近い価格で売ることになるので、
マージンがアップするという構造だ。
以上より、私は代理店の増加要望台数を、工場が対応できる範囲の2割減
(代理店の要望台数より4割以上少なくなる)に設定し、各代理店の売上計画比
に応じて、分けることにした。