shyumahaのブログ

海外でリーダーシップを発揮して働くために、私が海外勤務経験から得た体験記を記しています。

21.海外でリーダーシップを発揮して働くために

2)やるべきことの整理

 仕事に追いかけられていては何もできないので、所長としてやるべきことを考えてみた。

私の追いかける課題は、次の3つと考えた。

 

1. 戦略、戦術の大枠をつくる。

2.大枠を元に、現地スタッフと密接なコミュニケーションを行い、その過程を通じて

  彼らが理解し、実行するための戦略、戦術を協働で完成させる。

3.戦略、戦術をしっかり実行する体制、文化をつくる。

  

私は、営業所長なので、この課題を営業戦略の面から考えて実行するということだ。

これに向けて、私の行動を大枠決めるスケジュールを作ろうと考えた。

 

 営業所長として新しく赴任したとき、(これは国内転勤、海外転勤に関わらず)、

前任者の営業スタイルやマネジメントスタイルに対して、自分のスタイルをどうするか?

と悩む人もいると思う。私も当初、前所長のようにふるまえるか悩んだ。

 

しかし、人はそれぞれ個性がある。性格もこれまで経験してきた背景も異なるので、

前任者がすばらしい人だったからといって、真似してコピーになろうとしても無理があるし、

そんな必要も無いと思い直した。

 

営業所長の目指すところは当たり前のことでありシンプルだと思う。私は前述した追い

かける課題として、以下の図をいつも愚直に頭に描くことにしている。そして、これを

自分のスタイルを通じて遂行し業績を上げていくことを考えることにしている。

 

吹き出し: 四角形: 実行をモニタリングできる体制を作る。

現場から離れすぎないように同行などを入れながら、共に実行する。
吹き出し: 四角形: まず大雑把に戦略、戦術の大枠をつくる。

それを元に、スタッフとコミュニケーションして最終の戦略、戦術を協働で作り上げる
       

 

1. 戦略、戦術について

市場と、競合の状況はどうなっている?それを把握した上で誰に、何を、どのように

売ればいいか?それはなぜか?それは自社の強みが活きているか?そしてそれは

競合が真似しにくくなっているか?結果として、売上や利益が上がる見込みがあるか?

という大枠見通しを立てる。

 

まず自社にとって真のお客様は誰なのか?をしっかり定義する。そして、そのお客様に

対して競合と比べて少しでもいいのでお客様に喜んでもらうものやサービスを効果的に

提供する体制を構築する。それが競合にとってなかなか真似できないものであれば

なお良い。その結果として売上を上げる。もちろん最終的に自社の利益が出るように

なっていなければならない。

よく戦略の教科書で、3C(Consumer, Competitor, Company)をよく確認し、対象と

するお客様を決めて、競合と比べて差別化ポイントを決め、4P(Product, Price, Place, 

Promotion)に落とし込む。と書いてあるが、超単純にすると上記1を突き詰めて考える

ことになると思う。

 

2. コミュニケーションについて

大枠見通しからつくった、たたき台としての戦略や戦術を元に、現地スタッフや

代理店様との密接なコミュニケーションを心がける。その過程を通じて協働で戦略、

戦術を完成させる。

 

せっかく筋の良い戦略や戦術も現地スタッフや代理店様が理解し、やる気にならなければ、

実行されない。実行されなければただの紙くずだ。業績は上がらない。

そして、実行部隊の主体は現地営業スタッフになる。だからいかに現地スタッフに戦略、

戦術を理解してもらい、やる気を持ってもらうかが重要である。

 

そしてこれは、戦略、戦術の大枠たたき台をもとに、協働で戦略、戦術をつくりあげると

いう双方向の密接なコミュニケーションを通じて初めて可能となる。1回一方的に伝えて終わり、

とかメールで伝えて終わりなどということでは、絶対におぼつかない。

 

Face to Faceの コミュニケーションを面倒と思わず、多少うるさいと思われても自ら進んで、

戦略、戦術づくりのコミュニケーションに巻きこんでいくべきと思う。

優秀な人が陥りやすいことは、理屈の通ったきれいなそれらしい戦略、戦術を自分の

頭の中だけでつくり、説明をさらっと営業スタッフにして、『はい。後はあなた方が実行

してください』。としてしまうことである。

 

これでは双方向のコミュニケーションではなく、一方通行の伝達である。ここは海外。

いくら日本で優秀であった人でも文化も言語も考え方も異なる国では新人という謙虚な

気持ちが必要だ。もし、立案した戦略、戦術が的を外れていたり、現地営業スタッフが

理解していなかったら、あるいは一方的な指示のためにやる気が低下していたら、

効果的な活動にはつながらず、その結果成果も出ない。それを防止し、且つやる気も

醸成する唯一の方法が、戦略、戦術作りに参加してもらうコミュニケーションである。

 

3. 実行について

協働でつくりあげた戦略、戦術に基づいた行動進捗管理をしっかり行う仕組みと、

そもそも立案した戦略や戦術自体が間違っていないかのリアルタイムでのチェックが必要。

 

戦略、戦術を協働で作り上げたから、あとはあなたたちが実行してください。

このように実行レベルで放っておくと危険である。なぜなら、実行には、結構苦痛が伴う。

(メチャクチャ暑い中の営業活動、お客様に怒鳴られながら営業活動、重要だが口うるさい

お客様への営業活動等。でも目標は達成しなくてはならないという脅迫感)。

 

この苦痛から、狙っていた行動からの乖離が生じやすくなるからである。その結果、

営業活動がどんどん最初に設定した戦略、戦術から外れていって、そのままダラダラで

目標も未達成ということになりかねない。また、立案した戦略や戦術が本当に正しいのかは、

現場で確認するほかない。

 

間違っていたらすぐ修正が必要だ。それができないと成果は上がらず、無駄な努力の

徒労感だけが残る。だから、営業所長は効果的な進捗管理のしくみと、現場感を忘れない

ことが重要だ。

 

進捗管理に関しては、義務感、やりがい感、協働感を醸成しながら進めていかなくては

ならない。義務感は効果的な進捗管理の仕組みとそれにもとづく人事評価。

やりがい感、協働感は以下がポイントで、私はよりこのやりがい感、協働感が、義務感

に比べて忘れられがちになるがゆえに重要と思う。

・      その人のやっている仕事の重要性。
(その人が全体に与える影響、役割、たとえ小さくとも人の役に立っているという感覚)。

・      どうしてもきついときは、相談に乗るというサポート。また上司もそのきつさを

理解していること。(1人ではない。きつさを共有化しているという安心感)。

・      小さくてもいいので達成感を感じること。
(きつくても達成してほめてもらうと人はうれしいもの、充実感を感じるもの)。

・      自分の能力が向上しているという感覚。

(きついが、価値のあるものを学んでいるという感覚)。

 

というものを何とか努力して作り出す必要があると思う。人事評価に響くという

ハードの部分と、その人のやっていることを認めている且つその人にとってやりがい感、

協働感がある。というソフトの部分とが両輪でうまく回らないと、個人、ひいては組織

としての実行力は発揮できないと思う。

 

このやりがい感、協働感をつくりだすのは、正直なかなか難しいし、全員に目が

届かないときも多い。またしっかりサポートしたつもりでもやはり、辞めていくスタッフもいる。

しかし、そういったことを考え続けて発信していくことが重要ではないかと思う。


それと、現場を見ていると立案した戦略や戦術とのずれが出てくるときがある。

そのときは即修正が必要だ。現場を回っていない上司は、このあたりの感覚が鈍くなり、

どんどん後手に回ることになる。しかも現場感覚の無い頭だけいい上司は、部下を理屈で

押さえ込もうとするのでより最悪だ。

特に営業所長は、現場から離れすぎないように心がけることが重要だ。