shyumahaのブログ

海外でリーダーシップを発揮して働くために、私が海外勤務経験から得た体験記を記しています。

20.海外でリーダーシップを発揮して働くために

第3章:業務開始
3-1.仕事の方向付け

1)ホーチミン営業所長として出社

 2007年5月1日 正式に所長として出社した。ただこの出社日は少々困った

ことがあった。そう会社の車が出張で使えず、いきなりタクシーで出勤となったのだ。

タクシーはマンションの前にいつも止まっているので、拾うことに問題は無かったが、

乗ってからが問題だった。

 

こちらは発音を間違ってわけのわからないところに行かれては困るので、名刺に

ベトナム語で書いてある当社の事務所の住所を指し示して発音するが、それに

対して運転手さんの言っているベトナム語が全くわからない。

 

 今になっていえることだが、おそらくどの道を通って、この事務所まで行くか?

と聞いていたようだった。その当時は、当然わからないので、適当にYes

(Yes,Noぐらいはタクシーの運転手さんでもわかる)などと言っていた。

 

ところが困ったことに、途中で当社の運転手さんがいつも使っている道と違う

ところに入っていく。あわててここですよと、私は持っていた名刺の住所欄を

指差す。タクシーの運転手さんは、OK,OKなどと言っている。だが、そのうちその道は、

バイクの洪水となりメチャクチャ混んできて、にっちもさっちも行かなくなった。

 

うわーこれでは初日から会社に遅れる。正直あせったがどうしようもない。

なにせ電車もないので、このままタクシーに乗り続けるほか無い。何とか8時前

ぎりぎりに営業所に到着。新所長としての面子は保ったが、なんとも格好悪かった。

多少息切れしていたが、必死に呼吸を整えつつ所長席へ座る。

(所長の個室はなく、ベトナム人スタッフと同じ大部屋だ。念のため)。

 

通訳の女性がおはようございます。と日本語で話しかけてくれた。しばらくして、

暖かいお茶(チャノンと発音する)も入れてくれた。日本のお茶にはない赤茶色の

色をしている。どちらかというと日本茶よりもウーロン茶に近いか?と思いながら

ゆっくりと飲む。

 

 すでに事務所内は、ベトナム語がバンバン飛び交っている。お客様から当社営業

スタッフの個人携帯へ電話がかかってきているのだ。おそらくそうだろうと予測する

ほか無かった。ベトナム語が全くわからないので、お客様からの電話であろうが、

遊びの電話であろうが区別がつかない状態だからだ。それはとにかく置いておいて、

自分のしなければならないことを確認する。

 

5月の末から販売プロモーションが開始される予定となっているので、その価格表

の作成とパンフレット、チラシの作成が必要だ。ついで、当社の日本から財務部が

監査で来るので、お金の流れをわかりやすい表にまとめておかなければならない。

 

あとは、ホーチミンで一番おおきな代理店が、話があるので時間を取ってくれといって

いる。さらに4月を終えたので、月報を日本とハノイの本社に出さなければならない。

業務に関係の無いところでは、ワークパーミット(仕事で長期滞在しているというベトナム

での身分証明書)発行のための健康診断だ。

 

でもこんな仕事の仕方をしていては駄目だ。仕事に追いかけられるのではなく、

目指すべき方向を決めて、本当に所長がやるべき仕事を能動的に追いかけていかなく

てはならない。仕事というものは、惰性でやっているといろんな雑用にどんどん追いかけ

られまくることになる。と自分自身に言い聞かせた。

 

そう考えていた矢先、ベトナム人スタッフが次々と、承認をくださいといって、私の机に

いろいろなものを申請してくる。英語で書いているものもあれば、ベトナム語で書いて

いるものもある。金額の申請の場合は、貨幣単位は当然ベトナムドンだ。この貨幣単位

にも感覚的に追いついていない。

 

うかつに承認するサインをすると、とんでもないことになりそうだ。そう考えた私は、

大量の申請書類を1枚1枚スタッフに確認しながら対処することにした。

後になってわかったことだが、慣れればすぐに処理できるようになるし、ベトナム人スタッフ

に任せてもそれほど問題の無い案件もある。ただ最初なのでそれがわからない。

だから、初端は、まず全部目を通してみようと思った。

 

 これが思った以上に時間がかかる。ベトナム語も英語もできない私は、格好悪いが

すべて通訳を通して確認することになる。当然 私(日本語)→通訳。通訳(ベトナム語

→申請者。申請者(ベトナム語)→通訳。通訳(日本語)→私。とやたらと時間がかかる。

また、日本人が普通にしゃべるスピードで長い文章、難しい言葉は厳禁だ。

 

だから何回も短く切って言い直したり、通訳が理解していないと思ったら、さらに簡単な

言葉に置き換えたり、紙に書いたりして説明しなければならない。さらに時間がかかる。

これだけで午前中すべて使い切ってしまった。(メチャクチャ効率悪い)。

 

 昼食は、外回りをしていないときはベトナム人スタッフと事務所でベトナムの弁当を

食べることになる。当時は、弁当1つ120円ぐらいだ。おいしい弁当もあれば、結構、

味覚的にきついものもある。おかずが発泡スチロール弁当箱の端からはみ出したり

しているので、衛生的にもあまりきれいではないだろう。でもこれも同じ窯の飯を食う

ということで、日本人だけ特別に食事をするなどということはしない方がいいと思った。

 

昼食を10分ぐらいで済ましたあと、ベトナム人は30分ぐらい必ず昼寝をする。

日本人にはほとんど無い習慣だ。でもこの少し昼寝というのは、医学的に見ても

いいらしく私もベトナム文化に染まると共に、時間があれば少し昼寝が習慣になった。

 

 さて、午後の仕事開始だ。販売プロモーションの価格表作成に続き、そのポスター、

チラシ作成のため業者と打ち合わせ。すべてベトナム語なので、通訳にチェック

してもらいつつ進める。これもはじめてのことなので、思った以上に時間がかかる。

これが16時ごろようやく終了した。価格、文言が間違っていないかかなり神経をつかう。

 

一息つく間もなく代理店が来社。内容は前の販売プロモーション終了時の当社への不平だ。

不平といっても、要はプロモーション価格で安く買える分をもっと増やせということだ。

当社の前のプロモーション終了をお知らせする通達文の内容が不透明だったので、

オーダーがもっとできると思っていたが、いきなり打ち切られた。これは当社のミス。

だからプロモーション価格で買える台数をこれだけ増やしてくれという内容だった。

 

この交渉も、ベトナム語。だから内容は単純でも時間がかかる。加えて日本とは文化

も違うので、言いたいことははっきりと言ってくる。代理店さんも主張してくるときは

かなり激しい。この件に関しては、はっきり言って、こちらもやりあうことができる

内容だったが、私としては、いきなり赴任初日で有力な代理店さんとやりあうことも

得策でないこと。

 

また当社としてプロモーション価格で売る量を多少増やしても、赤字にはならない。

さらにスタッフによると、今までも結構この手の交渉は多く、結果的には当社は対応

していた。ということだったので、今回は受けた。

 

ただ、今後は終了した後でこのようなことにはならないよう、しっかり、当社営業スタッフ

にも徹底し、且つ通達文で明確に伝えることに決めた。代理店が帰っていき、少し一息つく。

 

健康診断は、間に合わないので、明日以降に延ばしてもらい、月報と監査のための書類

をつくる。身の覚えのある人も多いだろうが、仕事を引き継いだときの最初の月報作成は、

結構時間がかかる。販売数値データを詳細に記入する形式の場合は特にそうだ。

 

このデータはどこから拾ってくる?そもそもデータが無い場合は、だれからもらう?

本社の誰?こういうことを確認しながら、且つ数値を拾っていかなくてはならない。

当時販売データは、すべて本社がカウントし、エクセルに記入して送ってきていたので、

パソコンをたたけばオンラインでデータが見られるという形にはなっていなかった。

 

ベトナムの市場もわかっていない私は、それでも悪戦苦闘しながら、何とか月報を形にし、

監査の書類もラフにつくり、正式な所長赴任としての1日は終わった。

 

当社のベトナム人は就業後結構早く帰る18時30分頃になるとほとんどいない。

日本の会社のように21時、22時まで残っているような人はいなかった。そんな中、

私はポツンと1人で21時過ぎまで事務所にいた。何のことは無い、要は結果として

仕事に追われたという形になってしまった。