19.海外でリーダーシップを発揮して働くために
―コラム(短い引継ぎ期間を有効にするために)―
引継ぎ期間は、どこの会社も充分ではないだろう。だからこそ、聞きたいことをあらかじめ、
決めておく必要があると思う。もちろん、すべて聞き出せたからといってそれがすべて正しい
という保証はないし、ビジネスの現場は刻々と状況が変わるので、結局は自分が赴任した後、
実際に市場を見ながら、聞き出したことを確かめ、時には修正し、戦略や戦術を立案して
推進していかなければならないことはいうまでもない。
私の場合は、できるかぎりまず現状把握に努めるようにしている。現状把握をしておけば、
正式赴任してからの現場を回るときのチェックポイントも明確になるし、それをもとに早い
段階で戦略や戦術を立案して動くことができる。だから、とにかく引き継ぎ期間で前任者に
聞くことをあらかじめ決めておくことが重要と思う。私は大体以下の図を頭に描いてポイント
を聞くようにしている。
ただ、このときは日本と比べて市場もチャネルもあまりに異なり、また海外ということもあって、
ついていくのがやっとで整理し切れなかったことを思い出す。
① 商品決定の流れと自社の主要顧客の確認
エンドユーザーは大体どんな流れで当社、および競合商品を買っているのか?
流通業者や代理店の決定への関与度は?お客さんの層が複数あるなら、それぞれの
決定の流れは?現在当社にとって大切なお客さんは?それはなぜ?つまり主要顧客
とその顧客の購買行動、それに影響を与える力を確認する。
② 競合と自社の商品、サービスの確認
競合と自社の商品やサービスの特色は?大きく劣後していたり、大きく優っている部分
はあるか?つまり、競合と自社の商品やサービス差、特徴を確認する。
③ 自社の業績と利益ドライバーの確認
自社の全体売上推移と主要な商品別売上推移、それを分解した場合のチャネル別
売上推移。できれば利益推移と利益を生み出す構造もわかればなお良い。つまり自社
の業績とその柱となっている部分の確認をする。
一応、上記は確認するようにしている。これだけ聞いておくと、お客さんは主に誰で、
どのような購買行動を取っているか、また競合と自社の違いは何か、自社はどの商品が
業績の基盤になっているのか。大事なチャネルはどれか。などが超大雑把につかめる。
この質問に対する前任者の回答が、市場の事実を正確に反映していようが、いまいが
あまり大きな問題は無い。とりあえず回答を聞いておき、あとは自分が前任者の後に
正式赴任してから、これを確かめるために市場を回ればいい。市場をまわっているうちに、
『これは前任者の言ったとおりだな』。『でもこの部分は、ちょっと違う気がする。市場が
変わってきたか?』。などと考えながら、それを元に売上拡大戦略を作ればいい。
こういう仮説を持っていないと、ゼロから市場確認を行わなければならなくなるので、
非常に効率が悪くなる。
せっかくの引継ぎ期間を有効に使うことをおすすめする。特に海外は日本語が通じないので、
できる限り聞けるときにいろいろ聞いておき、その後現場を回りながら、必要に応じて修正して
いくべきであろう。