5.海外でリーダーシップを発揮して働くために
やがて下見の日が来た。成田空港に向かう途中でベトナムの情報誌を買い、
少しでも知識をつけておこうと考えながら読んでいた。
チェックインも無事終了し、飛行機に乗り込んだ。海外に行くのは、ハネムーン旅行
のカナダと6年前に業務で行った韓国以来である。
しかし今回は少し気持ちが違う。少なくとも3年は働くことになる地に行くのだ。どんな国
なのだろうかと思いを馳せながら、心地よいフライトで6時間後、無事ホーチミンに到着。
当時のホーチミンの空港は、国際線と国内線が一緒でやたらと人が多かったのを思い出す。
(現在は、国際線と国内線のターミナルは別)
空港のゲートを出ると、東南アジア特有のムッとした熱気。30度ぐらいの気温に湿度が
高いので、むし暑い。空港前はベトナム人のバイクの群れ。当然ながらみんな私にとっては
訳のわからないベトナム語でわめいている。
とそのうちに私を迎えに来てくれたホーチミンの現所長と無事会うことができた。その所長
の導きによって、会社でレンタルしている車に乗って、宿泊ホテルに向かう。車から見えるのは、多くのバイクの群れ!それもそのはず。人口が9000万人に届こうかというベトナム
には、日本のような電車や地下鉄は無い。公共の交通手段は未発達なのだ。
このため、ベトナム人はみんなバイクを自分の足として所有しているのだから言ってみれば、
日本で地下鉄や電車に乗っている人がみんなバイクに乗って道を走っているという感覚だ。
信号も当時はほとんどなかった。車間距離などないに等しい運転で、バイクなど危険を気
にせずどんどん車の前に出てくる。曲がるときなど全く周りを見ていない!しかも交差点は
フランス式のロータリーになっていて、四方八方から車や、バイクが我先にと突っ込んでくる。
日本の道路だと明らかに何人も死んでいるな。。。初めて見る光景にカルチャーショックを受けた。
所長に尋ねてみる。『よくこれでみんな運転していますね』。『運転している人は自分の前だけを
見ている。そこに集中している上、四方八方から突っ込んでくるという感覚を持っているので、
意外と大きな事故は少ない』。私はふーん、そんなもんか。しかし、国が違えばこれだけ交通
ルールが違うのかということを、身を持って知らされた。