96.海外でリーダーシップを発揮して働くために
第6章:ベトナム人スタッフの育成
1)課長に成長してもらう
業績は、市況の好調も追い風となり順調に進んでいる。
企業は人が動かしているので、人の育成が最も重要な課題だ。
何度も述べてきたように、現地で作って、現地で商売する以上、いくら赴任する
日本人に能力があっても、所詮日本人である。現地語を使いこなすには程遠いし、
その国の文化を深く理解すること、もっと言えばDNAに刷り込まれた感覚などは
遠く現地ベトナム人には及ばない。また、いつかはベトナムを離れるのである。
そう考えると、今いるベトナム人スタッフが、中心であるべきだし、彼らの能力が上がり、
自発的にやりがいをもって動くようになると、今後も会社は発展していくだろう。
そのために、お世辞にも能力のそれほど高くない私ではあったが、私の身につけているものは、
戦略、戦術、実行にいたるまで、できるだけ彼らとコミュニケーションを行い、
少しでも伝えてきたつもりである。
私は、赴任してすでに4年が過ぎていたので、彼らが判断して進める仕事の領域を拡大し、
その中で彼らが育っていってもらうとともに、やりがいを持っていただくことが最後の
私の仕事と考えた。
そして、ベトナム人の課長を育成し、彼の決裁権をなるべく拡大し、ベトナム人を名実
共に中心に持っていくように勤めようと思った。
まず手始めに、私が座っていた所長席(全営業マンを見渡せる中心にある)を彼にゆずり、
私は目立たない席へ引っ込んだ。これに関して、ハノイの社長は、ちょっと早いのではないか?
と心配したが最終的に任せてくれた。まずは権限を委譲する場合は、形も大事なのである。
ただ、その後なかなか委譲は、正直言って難しかった。どうしても不安になるとつい、
こちらが決定に口を挟んでしまう。こちらが口を挟むと当然、彼らは私の意見になびいてしまう。
私は、『私など所詮 日本人だからマーケットの奥深くなんて絶対に理解していない。あなたがた
ベトナム人のほうがマーケットで起こっている事実を深く知っているはず。私の意見など間違っていれば、
否定すればいいのですよ。
上司も人間だから絶対に間違いはある。目的はこのホーチミンのチームとして成果が
上がることが目的なので、そのための建設的な意見を言うことに上下関係は無い』と何度も言ったが、
なかなか上司に意見する土壌を作ることは難しかった。