shyumahaのブログ

海外でリーダーシップを発揮して働くために、私が海外勤務経験から得た体験記を記しています。

80.海外でリーダーシップを発揮して働くために

私『日ごろの販売努力に感謝いたします。おかげさまで当社の業績も上がっています。

当社が上がっているということは、御社も上がっていますよね?』 

 

代理店社長『悪くは無い。ただ、ガソリンなど物価上昇しているので、

コストは上がっている。だから今後もメーカーとしてのさらなるサポートは検討してほしい』。

相変わらず、それなりのジャブは打ってくる。

 

私『当社としては、さらにベトナム経済は伸びていくでしょうから、生産能力の拡大など

大きな億単位の投資も検討に入っています』。『お互い協働するところは協働し、

メーカーとして自助努力で行うところは自助努力で行います。

 

代理店さんとして自助努力で行えるところは行っていただくという面もお互い

必要ですね』。このような表現は、多少含みがあるので私の下手な英語では

かなりストレートな表現になっていただろう。英語の下手な自分が情けないところだ。

 

ここから、本題に入る。『あずけ在庫を止めて、出荷と同時に売上計上する方法に

変えていただきたいのですが』。『なぜそんな必要がある?今までで全く問題ない。

業績も上がっているのに、それに水をさすようなことをするのか?』。

 

『ここまで共に業績を上げることにご協力いただいたことは感謝いたします。

今後も共に発展していきたいと思っています。ただ、当社として財務の正確性を

求める必要があります。このためあずけ在庫方式を廃止したいと考えています』。

 

自社のキャッシュフロー改善などは、ここでは言えない。『財務の正確性? 別に

今までどおりで問題ないのではないか?』

『かつてのような販売個数が少ないときは、正確性は担保できました。ただ、私も

自社の営業マンが売上をカウントする場所に同行しましたが、(実際に同行した)

とても数が多く、正確にカウントできているとは思えません。

 

今後どんどん売上が上がればさらにカウントの正確性を求めるのは困難になるでしょう』。

『カウントする管理者を増やせばいいではないか?』『社長だから雇用の難しさはご理解

されているでしょう。カウントだけのために人を雇っても、仕事のやりがいがないため、すぐ辞めます。

 

このような雇用は彼らにとって不幸です』。『では営業マンを増やして、カウントも

仕事として兼務させればいいではないか』。『これも社長が一番理解されているでしょう。

人は雇いすぎても少なすぎても、経営の効率が悪くなりますよね。今の人員で弊社は安定しています』

 

だんだん、社長の顔が険しくなる。声も荒っぽくなる。普段は非常に柔和で、尊敬できる社長だが、

自社のことになると、やはり自分の会社を守るという経営者の顔がむき出しになる。

だが経営者はこれぐらいでないと勤まらない。

 

私の方から少し話題を変える。『社長、一番の問題は在庫切れによる、販売機会の損失

ですよね?』『そうだ』。『我々がホーチミンに倉庫を持ちます。そこで常に月初めに1ヶ月+α

の商品在庫を持ちます。場所も近いのでほしいときに取りに行けます』。

 

『それを超える注文がきたらどうするのか』?『急にそれほどの注文は来ないでしょうから、

随時ハノイ工場から送ってもらいます。ただし、基本は、今の売上予算をベースに商品在庫

を持ちます。それでいかがですか?』。

 

『メーカーはそれでいいだろうが、代理店の我々としては、キャッシュフローのリスクが

高くなる』。それはそうだろう。今までノーリスクで在庫をストックできたが、今後は当社の

出荷後売上計上されるので、代理店側としては、当社との支払い契約サイト内で販売店に売り

、回収まで行うことになる。

 

『ここ15年ほど経営されてきたと思います。どこのお客さんに、どの品番が、どれぐらい

売れているのか読めているでしょう。当社でも、普及3品番で全体の9割。そのうち、売上の

各エリアベスト10は、どこどこ。というデータはあります』。

 

『御社ならもっと正確にお分かりでしょうから、より正確に読めるはずです。万一、

読みが外れても、売上予算内では、御社の近くに当社の倉庫にストックがあるので、

取りに来ていただければ、そのリスクはさらに軽減されると思います』。

 

売店の社長はそれでも、苦虫を噛み潰したような表情で、承認はしてくれなかった。

それはそうだ。今までほとんどノーリスクだったことを少しでもリスクがある案に乗り換える人はいない。

交渉は昼の2時から始まったが、もう6時を迎えようとしていた。

 

双方とも、今日はこれ以上交渉しても決まらない。という雰囲気が流れ始めた。お互いに再度打ち合わせしましょうということで、第1回目は終了した。