shyumahaのブログ

海外でリーダーシップを発揮して働くために、私が海外勤務経験から得た体験記を記しています。

78.海外でリーダーシップを発揮して働くために

10)あずけ在庫を廃止する
1回目交渉

業績は、順調に上がっている。もう私のベトナムでの仕事も3年が経っていた。

業績もいいので、いよいよ一番難しいあずけ在庫の廃止に向けて、各代理店と

最後の交渉に臨むことを決めた。

 

むずかしい交渉、業績に響くかもしれない交渉は、業績の良いうちにする方が

やりやすい。業績が悪くなると、何かきびしい施策を提案したときに、売上が

落ちると脅されるとこちらも交渉に腰砕けになる可能性があるからだ。

 

このあずけ在庫問題は、以前に述べたが、代理店にとっては全く問題の無い

良い仕組みとなっている。なぜなら、代理店の倉庫にある商品が売れた時点で

請求が来るので、いくら商品を自分の在庫に持っていても問題が無い。

 

いやむしろたくさん在庫に持っていたほうが、販売機会を確実に捉えられるという

インセンティブが働く。

一方、当社から見るとどこまでが本当の需要で、どこまでが代理店が持っておきたい

からオーダーしているのか正確にわからない。その結果、無駄な商品を供給することは、

無駄な製造をしていることになり、キャッシュフローの観点からするとロスが生じている

ことになる。

 

できるかぎり、本当の需要を反映した発注と製造のタイミングを近づけることが必要となる。

なぜ、ホーチミン管轄だけこのようなあずけ在庫方式になったのかというと、やはり

それは理由がある。

 

当社がベトナムに進出した約15年前、工場は本社があるハノイに創設された。前述した

ようにハノイからホーチミンまで、飛行機で1時間半かかる。距離にして約1500Kmもある。

 

交通網も発達していなかったので、ハノイからホーチミンまで商品を運ぶのに2週間ほどかかる。

これでは商売にならない。かといって、会社を設立し工場に大きな投資をしている当社は、

これ以上大きなお金をかけたくない。

 

ということから、倉庫は各代理店が自前で用意し負担する。そして、そこへ当社があずけ

在庫という形で、各代理店の倉庫へ商品をあらかじめ供給しておく。

それらの商品を毎月、10日、20日、30日で当社がチェックし、売れた分を請求計上する。

という仕組みとなった。

 

スタート時は良い仕組みだったと思うし、この仕組みがあったことが売上アップの一因にも

なっていると思う。だが、現在のレベルまで売上が上がると、いろいろな弊害も出てくる。

 

この交渉の難しさは、代理店にとっては今のままでいい事を変えることになることである。

だが当社は、どんどん売上が上がっているので、そもそもあずけ在庫などしていては、

財務上の正確さが担保できなくなる。

 

また、キャッシュフロー上のロスを縮める必要がある。つまり、なかなか両社が満足という

交渉決着が見えにくい案件である。

はっきりいって、この仕事はこのまま放っておいても、売上という観点からは問題が無い。

ただ、この売上規模で、あずけ在庫方式は前述したように好ましくない。

この方式を止めるのは、業績が良い今の時期しかないと決心した。

 

最初の各代理店を説得する理屈は、以下の通りだった。