shyumahaのブログ

海外でリーダーシップを発揮して働くために、私が海外勤務経験から得た体験記を記しています。

94.海外でリーダーシップを発揮して働くために

しばらく以下の形態で商売を続けられませんか?

 

この形態のポイントは、別の現場代理店の顧客と彼の会社の顧客の重複が少ないこと。

3%程度の低マージンで取り引きすることのメリット。である。

 

幸い、別の現場代理店の販売部長が彼と前の会社で一緒の同僚であったこと。

(こういう情報もベトナム人スタッフとコミュニケーションを密にしていないと入ってこない)

から、条件によっては可能性があることが見込めた。

 

彼はこれを聞いて、まずはそうしていただけるとありがたい。といってくれた。私は、

ではこの案をまずは、別の現場代理店に話してみるので、今抱えている現場物件の

売上見込みを教えてください。そして少し時間をくださいと伝え、打ち合わせを終えた。

 

打ち合わせ後、当社のスタッフには、まずすぐにこの案を別の代理店の販売部長に

伝えるように。その上で詳しく話をしたいので、その販売部長とアポイントを取ってくださいと伝えた。

 

後日、その販売部長と会い、粗利3%でもお客さんが重なっていないなら、ほとんど顧客

開拓の経費をかけずに、あなたの会社にこれだけの先行き物件が売上になる可能性があること。

物流や経費、支払い方法も含めて詳細は、彼と取引詳細は直接打ち合わせいただいてもいいこと。

 

できるかぎり前向きに考えてほしい。ただし、将来は直接当社の代理店になることもあるので、

あなたのこの売上は期間限定になる可能性があることも伝えた。

 

後日、彼らは話をして、この方法を採用してくれた。今は彼の会社は当社の直接の現場代理店となり、

実績を上げている。後になるが、彼はわざわざ我々にお礼のディナーを催してくれたし、

私が日本へ本帰国する前には彼の会社で元気な姿を見ることができうれしく思ったことを思い出す。

93.海外でリーダーシップを発揮して働くために

2)現場代理店の内紛

ある日、当社の現場代理店担当スタッフから、相談事があると連絡を受けた。

内容は、既存の現場代理店のキーマン(副社長)が、今の会社を辞めるとの事。

そのことで相談ということであった。

 

深く内容を聞いてみると、この副社長は、今の現場代理店の共同出資者の1人。

全部で4人出資者がいるようだが、あとの3人は皆 身内で、彼だけが身内ではない。

どうもそのことが引き金となって、いろいろな経営方針で対立して、彼だけがきびしい

仕打ちを受けているようだ。そのことで少し相談したいので会ってほしいということだった。

 

こんなときも営業所長は、できる限り会って話を聞いてあげたほうがいい。そう思った

私は、いいですよと応じた。後日 彼は当社の事務所にやってきた。

彼を一目見て私は思った。かなりやつれたな。年は私より、2年ぐらい下のはずだが。

 

ひととおり挨拶した後、彼との話に入った。彼は、当社の複数ある現場代理店のある

1社の副社長であり、4人いる出資者の内の1人であること。

他の3出資者と経営理念が合わず、かなり追い込まれていること。暴力を振るわれ、

怪我をして、裁判所に訴えていることなどを話し始めた。

 

私も聞いていて正直びっくりしたが、彼がやつれている理由がわかる気がした。

彼のいいたいことは、今の会社を辞める予定であること。ただし、今の会社の売上の約

半分は、自分のお客さんであること。

 

今の会社を辞めて、あたらしく当社の代理店業を行いたい。だから代理店として

認めてくれないか?ということだった。

 

私は、彼と営業同行したこともあるので、人物的にはまじめで、信頼できると感じていた。

当社のベトナム人スタッフの評判もそうであった。ただ、新しく代理店として認めるとなると、

少々難しい。

 

もし私の一存で代理店として認めると、他の代理店への説明も難しいし(他代理店は、

とにかく同業他社が増えることは、競合が増えることを意味し、嫌がる)、

 

第一、当社に対する支払い能力も未知数だ。取れる担保も有るかどうかわからない。

かといって、彼が抜けた現場代理店は、先が落ち目になる可能性は高い。

 

さらに目の前にいる困難に直面している彼を何の救いの案もないまま帰すのも、

心苦しい。彼は明日からでも食い扶持がなくなってしまう可能性があるのだ。

 

少し考えて私は以下のことを彼と、当社スタッフに相談した。

92.海外でリーダーシップを発揮して働くために

代理店社長、販売店社長『では、どうするのか?』。

私『私案ですが、現在現場代理店は、毎月、現場見積もり情報を当社へ

送付いただいています。御社もそうしていただけませんか?

 

そうすれば先に営業情報が入ってきた方を優先します。これが公平かと思います。

情報が同時の場合は、両方対応で競争という形です』。 

 

代理店社長『しかし、50台以下などの物件でも現場代理店から安い価格がでるのは困る』。

私『確かにそれは頭の痛い問題です。台数の比較的少ない現場で価格のたたきあいが起これば、

売店さんや、代理店さんの商売がきつくなりますからね』。

 

『わかりました。赤字で出すことを現場代理店さんが行えば、完全に防ぐことは難しいですが、

当社としてできることは行います』。

 

まあ大体こんなやり取りであった。販売店さんの社長と代理店さんの社長は、

100%満足していなかったが、このあたりまでが私の考えられる対処であった。

後日、現場代理店には、

・      新しい現場価格の値引き体系を導入すること。50台以下の物件で、あまり安い

値段が出ないような価格体系を導入。(つまり当社からの出値を調整)

・      販売店が先にアプローチした物件には、原則 販売店チャネルを優先する。

一方、このNo1販売店には、

・      現場物件情報を毎月出していただければ、先にアプローチした方を優先すること。

ただし、最終はオーナーが決めること。

・      情報にのっていない物件や、特殊な事情で100%完全にバッティングを阻止する

ことは不可能なので、ご理解いただくこと。

・      50台以下の物件で、極端に安い値段が出ないように、当社として対処したこと。

 

以上を文書にして、説明して、この種の問題を対処した。

 

当然 現地ベトナム人スタッフもこれを説明する役割を担うので、事前にその内容を理解してもらった。

完全に解決できる対処案とは思わないが、お客さんからのクレームには真摯に対応しているという姿

が大切だと思う。これでまたしばらく、通常の営業活動が続くことになる。

91.海外でリーダーシップを発揮して働くために

No1販売店ではすでに、社長とこれまたNo1代理店の社長が我々を待っていた。

もちろんお客さんに日本語、英語は通じないので、ベトナム人スタッフと同行する

ことになる。私の考えはすでに当社スタッフに伝えてある。話が始まった。

 

売店社長『現場代理店の価格が安すぎて、物件を横取りされる。何とかならないか』?

私『日ごろは、当社の商品を販売いただき誠にありがとうございます。このたびは、

社長にその内容をもう少し詳しくお伺いさせていただきたいと思います』。

 

『こちらがアプローチしている物件を、現場代理店が安い価格で取っていく。

こんなことばかりされるとお宅の商品は販売できない』。当社代理店社長『現場代理店が

安すぎるので、市場が混乱する。販売店が大事なのはわかっているでしょう。何とかしてくれ』。

 

代理店と販売店の2人がかりの攻撃だ。私『販売店さんが、我々にとって大切なお客様で

あることは理解していますし、販売ご努力に感謝しております』。『具体的にどんな物件で、

問題が起きたのでしょうか』?『○○という物件だ。こちらがほぼ決めていたのに、

あとから現場代理店が安値を出して取られた』。

 

『何台ぐらいの物件ですか?』 『130台の物件だ。これ以外の以前にとられた物件も

いくつかある』。代理店社長『現場代理店制度を止めるか?あるいは、150台以上の

物件だけ現場代理店が見積もりを出す権利があるという決め事ができないか』? 

 

このあたりになると代理店も自分サイドからのみ考え出す。私『販売店さんが我々に

とって非常に大切で、中心であることは事実です。だからこそ我々は、販売プロモーション

という大きなセールは販売店さんにのみ実施し、現場代理店には実施していません。

また、現場代理店が販売店さんに売ることも認めていません。

 

一方で、販売店さんは、現場代理店さんのお客さんである大型物件にもアプローチする

ことを認めています。このことから我々は販売店さんを非常に重要なお客さんと考えている

ことを理解していただきたいと思います』。

 

売店社長、代理店社長『それでも我々は、現にこのような問題で困っている。

お客さんを取られるのは困る』。私『販売店さんが重要であり、特別な対応させて

いただいていることは、先ほど申し上げたとおりです。

 

一方で、現場市場もこれからは大事であり、申し訳ないですが、当社として現場代理店

からのアプローチを止めるというわけにはいきません』。『ですので、この問題をできる

限り防ぐ条件が重要かと思います』。

 

 代理店社長『だから、現場代理店は150台以上のみ対応可能としたらどうか』?

私『数で制限は難しいと思います。なぜなら、140台で非常に著名な物件も出てくる

可能性もあるでしょう。こういう物件は初動で情報を把握することが重要ですし、

物件情報を先に掴んだのに、ふたをあけたら、100台だったので営業できないということでは、

当社として営業力の著しい低下を招きます』。

90.海外でリーダーシップを発揮して働くために

この販売店の社長は、話がしたいとのことだ。

さらにホーチミンエリアNo1代理店も販売店側につくという状況だ。

(No1代理店は、現場代理店と市場では、競合関係なのでこのような状況になる)。

さあ、どうするか?

 

元々現場代理店は、大型物件を主に獲得するため、すばやい情報の入手と、

販売の迅速化、価格競争力アップのため、直接大型物件オーナーへ販売できる

体制にしてある。ただし、販売店への売りは禁止している。

 

つまり、こちら側だけの理屈で言うと、大型物件は現場代理店で受注する。

それ以外は、販売店経由で受注する。ときれいに分かれることが理想だ。

ただそうはきれいに行かないので、なるべくこの種のバッティングを最小化する方法

を模索することになる。このとき、私は大体以下のことを考えていた。

 

考え方の根底として、市場は現場市場と戸建市場の2つに大きく分かれる。

そして戸建市場が当社の業績を支えている。ただし、今後は特に都市部は、

経済発展に伴い商業ビルやホテルの建設が増えるであろうこと。

 

また土地も過密気味であること、若い人の親離れが進んでいることから、住居は

マンションやアパートが増えるであろう事。そういう意味で、現場市場にも今後注力

していく必要があること。

 

となると、現在の商売の基盤である、戸建市場を守り育てていくと共に、

現場市場へのアプローチもつぶさないことが必要となる。また最終的には、

右肩上がりの市場では、生産能力から来る供給能力と量産効果によるコスト

競争力を持っていれば、まだまだ市場で負けることは考えにくいと若干 楽観的に考えていた。

 

1. 流通構造が上記のような構図なので、致し方ないことを理解していただく。

つまり単なる説明だけとする。

2. 大型物件に関しては、現場代理店からは、毎月見積もり情報をもらっているので、

この販売店さんにもそれをお願いする。そして先に見積もりを出したところを優先とする。

ただし、最終の発注者は大型物件のオーナーなので、オーナーの意向が最終となる。

つまり、見積もり情報の提供を販売店さんへの条件とする。

3. 2を実行しつつ、50台以下の物件(今までの受注した物件のアベレージを調べて

50台以上が大型物件とした)については、当社から現場代理店に対する見積価格を

少し上げる価格ルールとする。

 

基本を上記、2,3の組み合わせで対応しようと考え、販売店へ向かった。

 

89.海外でリーダーシップを発揮して働くために

第5章:さまざまな顧客からの要求

1)No1販売店からの要求

次第に狙った行動が、根付きつつあると自分では思っていた。

でもおそらく私がベトナム語をしゃべることができるなら、いろいろな見落とし、

理解不足などがたくさん出てくるだろう。それぐらい異国の地で働くということ、

英語ではなく現地語を理解できないハンディはやはり大きいものである。

 

しかしそれでも、営業活動の狙い、その見える化を通じての確実な前進感。

経済が右肩上がりである事の環境的な有利面も加えて、業績が上がっていることが、

営業所の雰囲気を明るくしていた。しばらくは、この方向で走っていくことになる。

だがビジネスに問題、課題はつきもので、うまくいっているように思えても大小さまざまな

事柄が発生する。

 

ホーチミンでNo1の販売店である店からクレームが入った。クレーム内容は、当社の

ある現場代理店の大型物件に出す見積もりが安すぎて、ことごとく取られるという内容だった。

 

どこの商売でも、代理店同士のバッティングあるいは、代理店と販売店のバッティングは

よくあることだ。だがここは、ホーチミンでNo1の販売店である。いい加減な対応はできない。

 

現場代理店が、大型物件に出す見積もりが結構安く出てしまうということはちょくちょくある

ことである。要は、下図のような状況だ。

 

  

 

 

・      現場代理店は、毎月見積り情報を当社へ通知している。

・      現場代理店は、販売店へ売ることができない条件となっている。

・   現在の販売プロモーションは、販売店だけの適用。

 

普通に考えると、当社から代理店、現場代理店に販売する価格が同じなら、

売店が流通段階で1つ多い分、大型物件への出値は、上のチャネルの方が

高くなる。大体どこの業界でもこの種のバッティングは日常茶飯事だ。

問題は、このクレームをつけてきた販売店が、ダントツのNo1の売上であるので、少々頭が痛い。

88.海外でリーダーシップを発揮して働くために

あとは、交渉のとき、私もよく頭に血が上ってしまい、相手と私という敵対関係で

捉えてしまうことが多い。こうなると大抵はうまくいかない。我々ビジネスマンは、

ビジネス交渉がその大半である。喧嘩ではないので、相手を土俵から落として

しまえばビジネスは終わりとなる。

 

・      まずは相手の真の要望と自社の真の目指すべきところは何か?

・      その上で、双方が比率は異なるがメリットを享受できる方法はないのか?

それは短期で実現する必要があるのか?長期での実現でもいいのか?付帯条件で

緩和は可能か?などいろいろな観点から合意に至るための方策を譲れる範囲も含めて

徹底的に事前に考えておく努力が必要と思う。

 

・      上記を準備した後、交渉時には、しっかりと論点を確認しながら、冷静に進めていく

必要がある。(ちなみに交渉時は、努めて冷静にしようとしていても、双方ともに頭に

血が上ってしまうことが多い。実際に私もそうであった。

また、交渉相手が席を蹴って退場したこともあった。だが少なくともこちら側から席を

蹴って退場することは慎む必要がある)。

 

・      交渉をした結果、合意に至らなかった場合は無理に合意するのではなく、

一旦時間をおいて、また交渉した方がいいと思う。その方が実際の交渉で相手と

自分の真の目的が見えてきている場合も多く、さらに良い合意策につながる場合も多い。

 

・      最後にビジネスは、同じ相手と長く付き合うことが多く、そういう意味では、様々な

交渉ごとが永遠に続く。こういう状況の中、すべての交渉ごとに全勝目指して交渉を

すすめると、最終的にはビジネスは成り立たなくなると思う。やはり少し勝ち越しながら、

3勝2敗(どこかの本にも書いていたが)くらいで進めるのが、ビジネス交渉のイメージと思う。

 

現場での交渉は、本社から見ると甘いと思われることが多いようだ。だが、実際に商売で

関係する生身の人間と毎日顔を合わせなくてはならない現場サイドを、甘いとの一言で片付けるスタッフは、これもまた現場がわかっていないといえる。

 

情に流されすぎてビジネスにならないのは論外だが、一方的に共感なき理屈とパワーだけで

押し切ってしまって長期関係を考えない人もまたビジネスマンではないといえるだろう。

 

ビジネスは自分だけが、極端に得をするようなビジネスは、短期では成り立つかもしれないが、

長期的には相手が逃げて結局成り立たないと思う。相手もビジネスという土俵から降りる権利

があるからである。

 

ある交渉課題で、お互いの接点を徹底的に探し求める努力をしても、結果的にもし、

こちらからのみ押す交渉(つまり、相手には何のメリットもない交渉)を進めなければならない場合は、

最悪 相手と喧嘩別れになっても仕方ないと腹をくくることが必要である。